涓
涓
名詞
標準
文例 · 用例
優善も良三も、共に涓滴の量なくして、あらゆる遊戯に耽ったのである。
— 森鴎外 『渋江抽斎』 青空文庫
竜池は涓滴の量だになかった。
— 森鴎外 『細木香以』 青空文庫
ぴしや/\と落ちる涓滴が暫く彼の耳の底を打つた。
— 長塚節 『土』 青空文庫
その文體をたとへて云へば、一條の流れが涓々として走り來つて、灣曲また灣曲、渦を卷いてみどりの淵になると、堤上に生へて居る灌木の影を浸して、その深い穩かな水面がまゝ破れて、大きな魚の躍如として跳ね飛ぶことがあるのに似て居る。
— 岩野泡鳴 『神秘的半獸主義』 青空文庫
南はその飛沫を避けて一方の手で長裾にかかった涓滴をはたいた。
— 田中貢太郎 『竇氏』 青空文庫
網代は山間の一温泉塲なり、むかし蒼海と手を携へて爰に遊びし事あり、巌に滴る涓水に鉱気ありければ、これを浴室にうつし、薪火をもて暖めつゝ、近郷近里の老若男女、春冬の閑時候に来り遊ぶの便に供せり。
— 北村透谷 『三日幻境』 青空文庫
涓々たる谷の小河の草の間を流れ行くを見れば、おのれが心中にも細き小河のありて、心の草を洗ふべしと思ふなり。
— 島崎藤村 『山家ものがたり』 青空文庫
願はくは心中一點の星をして、思ふがまゝに其光を放たしめ、涓々たる心中の細流をして、流るべきの岸に流れ、洗ふべきの草を洗はしめ、ちいさき心中の花をして、おのづから開くべきの花を開かしめん。
— 島崎藤村 『山家ものがたり』 青空文庫