靴工
かこう
名詞
標準
文例 · 用例
やがて彼も遺産の田地もいくらか残っていたので、それを金にして、柳原で店を拡げることになったのだったが、もう十四にもなった銀子が、蔵前のある靴工場へ通い、靴製造の職を仕込まれた時分には、子供も殖え、彼も怪我をして、小僧と職工を四五人つかっていた、柳原の店も寂れがちであった。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
漁師の子は遁れて靴工の宅に入り仔細を明かし、踵を前に指を後にした靴一足を拵えもらい、穿って村を出るに高い牆で取り廻らして踰ゆる事ならぬから、やむをえず水|竇中から出た。
— 犬に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
して見ると、この靴工が毎朝隣人や貧者のために真心籠めた祈念の効は、尊者が多大の財産を慈善事業に撒き散らしたのと対等で、一生女に寄り付かず素食して穴居苦行しただけ尊者の損分じゃてや。
— 猪に関する民俗と伝説 『十二支考』 青空文庫
ブルッセルの家では出入りする友人の中にも革命的な時計工、靴工という種類の人々が登場した。
— 宮本百合子 『カール・マルクスとその夫人』 青空文庫
あの人は靴工なんかにはもったいない人間だったんだわ。
— 海野十三 『十八時の音楽浴』 青空文庫
俺と仲のいい靴工ポールの奴は身体を女性に直しやがったが、あれは俺と一緒になりたくてそうしたのにちがいない。
— 海野十三 『十八時の音楽浴』 青空文庫
[自注10]西村の向島の「靴場」――百合子の母の叔父にあたる人が靴工場を経営していた。
— 一九四四年(昭和十九年) 『獄中への手紙』 青空文庫
その上、個人営業をやめて靴工場で働くようになってからはじめての休みだ。
— 宮本百合子 『ズラかった信吉』 青空文庫