襤褸切
ぼろきれ
名詞
標準
文例 · 用例
吉例だとあって朝鮮の鶴と称するものの吸物を出す家があったが、それが妙に天井の煤のような臭気のある襤褸切れのような、どうにも咽喉に這入りかねるものであった。
— 寺田寅彦 『新年雑俎』 青空文庫
「ほんの纔ばかり、一|撮み、手巾、お手拭の端、切ッ屑、お鼻紙、お手許お有合せの柔かなものにちょいとつけて、」 婦人は絹の襤褸切に件の粉を包んで、俯向いて、真鍮の板金を取った。
— 泉鏡花 『黒百合』 青空文庫
) と云う内にも、襤褸切や、爪の皮、ボオル箱の壊れたのはまだしもで、いやどうも、言おうようのない芥が目に浮ぶ。
— 泉鏡花 『沼夫人』 青空文庫
担える籠は覆りて、紙屑、襤褸切、硝子の砕片など所狭く散乱して、脛は地を蹴り、手は空を掴みて、呻吟せり。
— 泉鏡花 『貧民倶楽部』 青空文庫
ずたずたになれる筵の上に、襤褸切、藁屑、椀、皿、鉢、口無き土瓶、蓋無き鍋、足の無き膳、手の無き十能、一切の道具|什物は皆|塵塚の産物なるが、点々散乱してその怪異いうべからず。
— 泉鏡花 『貧民倶楽部』 青空文庫
その春陽の一ぱいにあたるところに襤褸切れを持ち出して、おちかは一日ぢゆうあれこれといぢくりまはしてゐた。
— 島木健作 『第一義の道』 青空文庫
着古した着ものやそれをほどいた襤褸切れのなかにこめられた過去の生活の匂ひをなつかしむのであらう。
— 島木健作 『第一義の道』 青空文庫
一方に臓腑は腹の皮と一緒に襤褸切れを見るように黒ずみ縮んでピシャンコになってしまい、肋骨や、手足の骨が白々と露われて、毛の粘り付いた恥骨のみが高やかに、男女の区別さえ出来なくなっている。
— 夢野久作 『ドグラ・マグラ』 青空文庫