旧城
きゅうじょう
名詞
標準
文例 · 用例
夏休みは標本採集の書きいれ時なので、毎日捕虫網を肩にして旧城跡の公園に出かけたものである。
— 寺田寅彦 『夏』 青空文庫
朝まだ暗いうちに旧城の青苔滑らかな石垣によじ上って鈴虫の鳴いている穴を捜し、火吹竹で静かにその穴を吹いていると、憐れな小さな歌手は、この世に何事が起ったかを見るために、隠れ家の奥から戸口に匍いだしてくる。
— 寺田寅彦 『夏』 青空文庫
そうして庭の樹立の上に聳えた旧城の一角に測候所の赤い信号燈が見えると、それで故郷の夏の夕凪の詩が完成するのである。
— 寺田寅彦 『夕凪と夕風』 青空文庫
比較的新しい方の例で自分の体験の記憶に残っているのは明治三十二年八月二十八日高知市を襲ったもので、学校、病院、劇場が多数倒壊し、市の東端|吸江に架した長橋|青柳橋が風の力で横倒しになり、旧城天守閣の頂上の片方の鯱が吹き飛んでしまった。
— 寺田寅彦 『颱風雑俎』 青空文庫
宅の前を流れている濁った堀川に沿うて半町ぐらい上ると川は左に折れて旧城のすその茂みに分け入る。
— 寺田寅彦 『花物語』 青空文庫
いつか英国人の宣教師の細君が旧城跡の公園でテントを張って幾日も写生していた事があった。
— 寺田寅彦 『自画像』 青空文庫
帰り途に旧城の後ろを通った。
— 寺田寅彦 『森の絵』 青空文庫
旧城のお濠の菱の実も今の自分には珍しいものになってしまった。
— 寺田寅彦 『郷土的味覚』 青空文庫