幽明
ゆうめい
名詞
標準
文例 · 用例
幽明|遙けく隔つとも僕の心は一日も民子の上を去らぬ。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
雨景の中でぽうと呼吸をすひこむ靈魂妙に幽明な宇宙の中で一つの時間は消抹され一つの空間は擴大する。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫
夜明けに遠く、窓の鎧扉の隙間から、あるかなきかの侘しい光が、幽明のやうに影を映して居た。
— 萩原朔太郎 『宿命』 青空文庫
一生他人たるまじと契りたる村越欣弥は、ついに幽明を隔てて、永く恩人と相見るべからざるを憂いて、宣告の夕べ寓居の二階に自殺してけり。
— 泉鏡花 『義血侠血』 青空文庫
其癖、ガラ/\と又……今度は大戸の閉つた時は、これで、最う、家内と私は、幽明処を隔てたと思つて、思はず知らず涙が落ちた。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
彼は穴の奥で三日間は虫の息で、生きてゐるのだか死んでゐるのだか、それこそ全く幽明の境をさまよひ、四日目に、猛烈の空腹感に襲はれ、杖をついて穴からよろばひ出て、何やらぶつぶつ言ひながら、かなたこなた食ひ捜して歩いてゐるその姿の気の毒さと来たら比類が無かつた。
— 太宰治 『お伽草紙』 青空文庫
彼は穴の奧で三日間は蟲の息で、生きてゐるのだか死んでゐるのだか、それこそ全く幽明の境をさまよひ、四日目に、猛烈の空腹感に襲はれ、杖をついて穴からよろばひ出て、何やらぶつぶつ言ひながら、かなたこなた食ひ搜して歩いてゐるその姿の氣の毒さと來たら比類が無かつた。
— 太宰治 『お伽草紙』 青空文庫
「姉の方は、天か地か、まるで幽明処を隔つ、遠い昔のものがたりの中に住むか、目近に姿ばかりの錦絵を見るようだろう。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫