盥回し
たらいまわし
名詞
標準
文例 · 用例
* 遺産相続法が変って全ての子供に平等になったので、長子が親の養育の責任をもつ風がうすれ、全部の子で親をタライ回しに養育する風が生まれたそうであるが、そういうタライまわしは戦前にもあった。
— 坂口安吾 『親が捨てられる世相』 青空文庫
こうして未決監から未決監へと盥まわしにされて、しまいには新らしい監獄へ来るたんびに、君はあたりを見まわして、こんなことを呟やくようになるのだ。
— または チチコフの遍歴 第一部 第二分冊 『死せる魂』 青空文庫
で、占領地の海軍病院を次々に盥まわしにしていましたが、結局、置くところがなくなって、島へやろうというのでしょう。
— 久生十蘭 『ノア』 青空文庫
なんにもしない、人間を、一ツの警察から、次の警察へ、次の警察から、又その次の警察へ、盥廻しに拘留して、体重が二貫目も三貫目も減ってしまった例がいくらでもある。
— 黒島傳治 『鍬と鎌の五月』 青空文庫
そしてその蜜蜂に訊ねたら、今度は盥廻しにまた飛廻る他のものに、その在所をやよといって持ち廻るでしょう。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
サモアから濠洲へ、濠洲から独領西南アフリカヘ、アフリカから独逸本国へ、独逸から又ミクロネシアヘと、盥廻しに監禁護送されて来たのである。
— 中島敦 『光と風と夢』 青空文庫
「盥廻し」をされてしまつたのだつた。
— 小林多喜二 『一九二八年三月十五日』 青空文庫
他の苦しみを自分が背負うのはやむを得ないが、それをまた背負いきれないで他に転嫁するということは、結局苦しみの盥廻しをするだけのことで、苦しみそのものの救いにもならないし、解消にもならないということを、米友はよく知っておりました。
— 新月の巻 『大菩薩峠』 青空文庫