獅噛
しかみ
名詞
標準
文例 · 用例
」 と切なそうに顔を獅噛める。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」「へへい、」と頓興な、ぼやけた声を出して、め組が継の当った千草色の半股引で、縁側を膝立って来た――婦たちは皆我を忘れて六畳に――中には抱合って泣いているのもあるので、惣助一人三畳の火鉢の傍に、割膝で畏って、歯を喰切った獅噛面は、額に蝋燭の流れぬばかり、絵にある燈台鬼という顔色。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」 と獅噛面を後へ引込めて目を据える。
— 泉鏡花 『朱日記』 青空文庫
……この度の参宮には、都合あって五二館と云うのへ泊ったが、内宮様へ参る途中、古市の旅籠屋、藤屋の前を通った時は、前度いかい世話になった気で、薄暗いまで奥深いあの店頭に、真鍮の獅噛火鉢がぴかぴかとあるのを見て、略儀ながら、車の上から、帽子を脱いでお辞儀をして来た。
— 泉鏡花 『歌行燈』 青空文庫
」 とまた差俯向く肩を越して、按摩の手が、それも物に震えながら、はたはたと戦きながら、背中に獅噛んだ面の附着く……門附の袷の褪せた色は、膚薄な胸を透かして、動悸が筋に映るよう、あわれ、博多の柳の姿に、土蜘蛛一つ搦みついたように凄く見える。
— 泉鏡花 『歌行燈』 青空文庫
……芳しい落葉の香のする日の影を、まともに吸って、くしゃみが出そうなのを獅噛面で、(鋳掛……錠前の直し。
— 泉鏡花 『唄立山心中一曲』 青空文庫
四角でもなし、円でもなし、真鍮の獅噛火鉢は、古寺の書院めいて、何と、灰に刺したは杉の割箸。
— 泉鏡花 『菎蒻本』 青空文庫
お道はぞつとして思はず衾の袖に獅噛み付くと、おそろしい夢は醒めた。
— お文の魂 『半七捕物帳』 青空文庫