幻辞.com

蝙蝠傘

こうもりがさ
名詞
1
標準
文例 · 用例
蝙蝠傘の上などに落ちて凍った雨滴を見ると、それが傘の面に衝突して八方に砕け散った飛沫がそのままの形に氷になっている。
寺田寅彦 凍雨と雨氷 青空文庫
出口へ出るとそこでは下足番の婆さんがただ一人落ち散らばった履物の整理をしているのを見付けて、預けた蝙蝠傘を出してもらって館の裏手の集団の中からT画伯を捜しあてた。
寺田寅彦 震災日記より 青空文庫
小川の油のやうな水面は大きく波立つて、眞黒な人影が毆れた蝙蝠傘のやうに動いてゐた。
南部修太郎 一兵卒と銃 青空文庫
「附際々々、」 ともう一息め組の首を縮める時、先方は格子戸に立かけた蝙蝠傘を手に取って、またぞろ会釈がある。
泉鏡花 婦系図 青空文庫
ト構内の長屋の前へ、通勤に出る外、余り着て来た事の無い、珍らしい背広の扮装、何だか衣兜を膨らまして、その上暑中でも持ったのを見懸けぬ、蝙蝠傘さえ携えて、早瀬が前後を※しながら、悄然として入って来たが、梅の許なるお妙を見る……「おお、」 と慌しい、懐しげな声をかけて、「お嬢さん。
泉鏡花 婦系図 青空文庫
主税はたちまち思いついたように、「お嬢さん、」と云うや否や、蝙蝠傘を投出すごとく、井の柱へ押倒して、勢猛に、上衣を片腕から脱ぎかけて、「久しぶりで、私が洗って差上げましょう。
泉鏡花 婦系図 青空文庫
」 まことに硯を持って入って、そのかわり蝙蝠傘と、その柄に引掛けた中折帽を忘れた。
泉鏡花 婦系図 青空文庫
それをまたひとりでここで見直しつつ、半ば過ぎると、目を外らして、多時思入った風であったが、ばさばさと引裂いて、くるりと丸めてハタと向う見ずに投り出すと、もう一ツの柱の許に、その蝙蝠傘に掛けてある、主税の中折帽へ留まったので、「憎らしい。
泉鏡花 婦系図 青空文庫