帆掛け
ほかけ
名詞
標準
文例 · 用例
吾輩は元来ここまで一行を見送り、明日は失敬して帰京する予定なので、旅装も何もして来なかったが、新手の武者さえ馳せ加わっては、見苦しく尻に帆掛けて逃出す訳にも行かない。
— 押川春浪 『本州横断 癇癪徒歩旅行』 青空文庫
この中庭には舟に帆掛けて入るべけれど、舳艫を旋さんことは難かるべし。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
かくて女王が勅定した月数が過ぎると「別れの風かよ、さて恨めしや、いつまた遇うやら遇わぬやら」で銘々男の住所姓名を書いて渡し、涙ながらに船は出て行く帆掛けて走る、さて情けの種を宿した場合に生まれた子が女なら島へ留めて跡目相続、男だったら父の在所へ送致する(ここギリシア伝説混入)」というが甚だ疑わしい。
— 猴に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
そうして、大河の帆掛け舟が「そんな大火があったかい」といったように静かに滑って行くのが見えました。
— 焼け跡の身惨なはなし 『幕末維新懐古談』 青空文庫
熊手の真ん中にまず大根締めを取り附け、その上に俵を三俵または五俵真ん中に積み、その後に帆の附いた帆掛け船の形が出来て、そのまわりにいろいろな宝が積み込んであるように見せて、竹の串に刺して留めてある、ちょうど大根締めと俵とに刺さるようになるのです。
— 熊手を拵えて売ったはなし 『幕末維新懐古談』 青空文庫
そんな始末であつたので渥美へもあれつきり挨拶にも行かず、京都の天地を後に、尻に帆掛けて出發したのであつた。
— 高濱虚子 『俳諧師』 青空文庫
――あの物堅そうな名和長年までが、ちかごろ彼の家中風俗を町でも“伯耆様”と呼んでいるほど、いつのまにか都振りに染んで、恩賜の“帆掛け紋”を、旗、道具、衣裳につけ、その行装の華奢なこと、たれにも負けない風だった。
— 建武らくがき帖 『私本太平記』 青空文庫
磯辺に出て、かなたこなたを見廻したが、あの帆掛船の影も見えず、また、他に人のいるけはいもなかった。
— 太宰治 『地球図』 青空文庫