片頬
かたほお
名詞
標準
文例 · 用例
」次女は、卓の上に頬杖ついて、それも人さし指一本で片頬を支えているという、どうにも気障な形で、「ゆうべ私は、つくづく考えてみたのだけれど、」なに、たったいま、ふと思いついただけのことなのである。
— 太宰治 『愛と美について』 青空文庫
帰宅してみると猫が片頬に饅頭大な腫物をこしらえてすこぶる滑稽な顔をして出迎えた。
— 寺田寅彦 『札幌まで』 青空文庫
そして、艶々しい黒髮も、ふくよかな片頬の肉も、黒み勝ちな瞳も、何時も潤んだその赤い脣も――すべてはお前の姿から忘れられてしまつたやうに思はれた。
— 南部修太郎 『疑惑』 青空文庫
」と、S氏は穩かな微笑を片頬に浮べながら云つた。
— 南部修太郎 『修道院の秋』 青空文庫
柔和な顏に落ち著きはあつたが、まばらな白髮にも、片頬の小皺にも、消し難いやうな寂しさがあつた。
— 南部修太郎 『修道院の秋』 青空文庫
ああ、これは、」 と片頬笑みして、「余り上等な墨ではありませんな。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
影が痣になって、巴が一つ片頬に映るように陰気に沁み込む、と思うと、ばちゃり……内端に湯が動いた。
— 泉鏡花 『眉かくしの霊』 青空文庫
」 と歎息するように独言して、扱いて片頬を撫でた手をそのまま、欄干に肱をついて、遍く境内をずらりと視めた。
— 泉鏡花 『妖術』 青空文庫