行かす
いかす
動詞
標準
文例 · 用例
」 しかし、――他吉という男はど阿呆や、われが七年もいて一銭の金もよう溜めんといて、娘の婿を懲りもせんとマニラへ行かす阿呆があるかと言われて、随分腹が立ったからとは、さすがに子供相手に語りも出来ず、「お初に告わんといてや。
— 織田作之助 『わが町』 青空文庫
正月を当てこんでうんと材料を仕入れるのだとて、種吉が仕入れの金を無心に来ると、「私には金みたいなもんあらへん」種吉と入れ代ってお辰が「維康さんにカフェたらいうとこイ行かす金あってもか」と言いに来たが、うんと言わなかった。
— 織田作之助 『夫婦善哉』 青空文庫
其五 西行かすかに眼を転じて、声する方の闇を覗へば、ぬば玉の黒きが中を朽木のやうなる光り有てる霧とも雲とも分かざるものの仄白く立ちまよへる上に、其|様異なる人の丈いと高く痩せ衰へて凄まじく骨立ちたるが、此方に向ひて蕭然と佇めり。
— 幸田露伴 『二日物語』 青空文庫
下人はまた、それを行かすまいとして、押しもどす。
— 芥川龍之介 『羅生門』 青空文庫
下人は又、それを行かすまいとして、押しもどす。
— 芥川龍之介 『羅生門』 青空文庫
……すの類の ansu は、右の里語以外にも広く行はれた「通常安易敬語」で、古代から中世を経て来た「行かす」「思はす」の、方言化して行はれてゐたものらしく見えるが、此は断言する訣にはゆかぬ。
— 折口信夫 『「さうや さかいに」』 青空文庫
たとへば、他の地方で、「行きなさるから」「お行きだから」「行かつしやるから」など、色々な言ひ方をする場合にも、「行かすけに」「行かすけん」と言ふのを聞くと、実際耳の洗はれた感じがする。
— 折口信夫 『「さうや さかいに」』 青空文庫
ところが、時代の前後は訣らぬとしても、接合が自然で、融和してゐて、其為相寄つた語が、語原的に理会出来なくなつて居るものが、今も方言中にはあつて、一見如何にも、「行かすけん」よりも古く出来たことを示してゐる。
— 折口信夫 『「さうや さかいに」』 青空文庫