謹三
謹三
名詞
標準
文例 · 用例
松野謹三、渠は去年の秋、故郷の家が焼けたにより、東京の学校を中途にして帰ったまま、学資の出途に窮するため、拳を握り、足を爪立てているのである。
— 泉鏡花 『瓜の涙』 青空文庫
――今朝も、その慈愛の露を吸った勢で、謹三がここへ来たのは、金石の港に何某とて、器具商があって、それにも工賃の貸がある……懸を乞いに出たのであった―― 若いものの癖として、出たとこ勝負の元気に任せて、影も見ないで、日盛を、松並木の焦げるがごとき中途に来た。
— 泉鏡花 『瓜の涙』 青空文庫
けれども人々は、ただ雲を掴んで影を視めるばかりなのを……謹三は一人その花吹く天――雲井桜を知っていた。
— 泉鏡花 『瓜の涙』 青空文庫
謹三は、ハッと後退りに退った。
— 泉鏡花 『瓜の涙』 青空文庫
「火事だ、」謹三はほとんど無意識に叫んだ。
— 泉鏡花 『瓜の涙』 青空文庫
謹三の袖に、ああ、娘が、引添う。
— 泉鏡花 『瓜の涙』 青空文庫
」 と口の裡、呼吸を引くように、胸の浪立った娘の手が、謹三の袂に縋って、「可恐い……」「…………」「どうしましょうねえ。
— 泉鏡花 『瓜の涙』 青空文庫
」 と引いて縋る、柔い細い手を、謹三は思わず、しかと取った。
— 泉鏡花 『瓜の涙』 青空文庫