一縷
いちる
名詞
標準
slightest connection
文例 · 用例
自分も新しい主婦の晴れやかな顔を見て、何となくこの店に一縷の明るい光がさすように思うた。
— 寺田寅彦 『やもり物語』 青空文庫
しかしそれほど偶然的でない色々な災難の源を奥へ奥へ捜って行った時に、意外な事柄の継起によってそれが厄年前後における当人の精神的危機と一縷の関係をもっている事を発見するような場合はないものだろうか。
— 寺田寅彦 『厄年と etc.』 青空文庫
それで医者ならば生き返らせることができるかとの一縷の望みをかけて、いっせいに医者に思いをあつめた。
— 伊藤左千夫 『奈々子』 青空文庫
我邦の昔の「歌垣」の習俗の真相は伝わっていないが、もしかすると、これと一縷の縁を曳いているのではないかという空想も起し得られる。
— 寺田寅彦 『映画雑感6』 青空文庫
見渡すかぎり、両側の森林これを覆ふのみにて、一個の人影すらなく、一縷の軽煙すら起らず、一の人語すら聞えず、寂々寥々として横はつて居る。
— 國木田独歩 『空知川の岸辺』 青空文庫
秋の空澄み渡って三里隔つる元越山の半腹からまっすぐに立ち上る一縷の青煙すら、ありありと目に浮かんで来る。
— 国木田独歩 『小春』 青空文庫
だがやつぱり不治なぞといふことはないだらうと、私は猶|一縷の望みは消さないで持つてゐたことに、誇りをさへ感じた。
— 中原中也 『亡弟』 青空文庫
それは晩春の頃からころころと啼き始めて、やがて湧き立つ様に野をこめる蛙の声が、どんなにめずらしくなつかしく、かやの稚い心をそそる夜も、秋祭りの野太鼓が、しきりに響いて渡る頃であっても、かすか乍らも澄み透って一縷の哀調を運ぶ横笛の音なのであった。
— 岡本かの子 『かやの生立』 青空文庫
作例 · 標準
医師から手術の成功率は低いと宣告されても、家族は一縷の望みを捨てなかった。
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遭難から三日が経過したが、救助隊はまだ生存しているという一縷の可能性にかけて捜索を続けている。
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圧倒的に不利な裁判だったが、新たに見つかった証拠が彼にとっての一縷の光となった。
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標準
one thread
作例 · 標準
古くなったセーターの袖口から、赤い毛糸が一縷だけほつれて垂れ下がっている。
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軒先に張られた蜘蛛の巣が一縷、朝露に濡れて朝日の中でキラキラと光った。
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煙突からは、細い一縷の煙が風に流されることなく真っ直ぐに立ち昇っていた。
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