踞
踞
名詞
標準
文例 · 用例
紳士の影に潛んで顏も上げず、蹲踞つて、風呂敷の包物を膝にかかへた儘、胸悸して居るのが不圖目を見張つて、壯侠の顏を偸視る、途端、その亦鋭い視線と出合つて、俯向と急に顏色を變へた。
— 萩原朔太郎 『二十三夜』 青空文庫
黄花石楠花が、岩角の間に小さくしがみついて咲いている、その間を踏んで、登れば、千枚沢岳と悪沢岳の間に、赤石山が吊鐘を伏せたように円く立っている、支脈伝いに背面を見た時には、壮大だと思った白河内岳も、ここから見ると、可愛そうなほど、低くなって、下に踞くまってしまった。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
彼女は今私が足下の方に踞ったので、私の方を見ることを止めて上の方に眼を向けていた。
— 葉山嘉樹 『淫賣婦』 青空文庫
梅と柳の間を潜って、酒井はその竹垣について曲ると、処がら何となく羽織の背の婀娜めくのを、隣家の背戸の、低い石燈籠がト踞んだ形で差覗く。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」 衣紋を直したと思うと、はらりと気早に立って、踞った婢の髪を、袂で払って、もう居ない。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
そこに踞んでいた、例のつんつるてん鞠子の婢が、湯加減を聞いたが上塩梅。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」 と言うが疾いか、早瀬の手は空を切って、体を踞んだと思うと、「あれ、」 かっとなって、ふらふらと頭重く倒れようとした――手を主税の肩に突いて、道子はわずかに支えたが、早瀬の掌には逸早く壁の隅なる煤を掬って、これを夫人の脛に塗って、穂にあらわれて蔽われ果てぬ、尋常なその褄はずれを隠したのであった。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
が、心着いたら、心弱い婦は、得堪えず倒れたであろう、あたかもその頸の上に、例の白黒|斑な狗が踞っているのである。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫