遅比
おそひ
名詞
標準
文例 · 用例
お酔いつぶれになっていた天皇は、河内の多遅比野というところまでいらしったとき、やっとおうまの上でお目ざめになり、「ここはどこか」とおたずねになりました。
— 鈴木三重吉 『古事記物語』 青空文庫
天皇はそれをお聞きになって、はじめてびっくりなさり、「ああ、こんな多遅比の野の中に寝るのだとわかっていたら、夜風を防ぐたてごもなりと持って来ようものを」と、こういう意味のお歌をお歌いになりました。
— 鈴木三重吉 『古事記物語』 青空文庫
河内の多遅比の柴垣宮で、政をおとりになり、おん年六十でおかくれになりました。
— 鈴木三重吉 『古事記物語』 青空文庫
故称謂多遅比瑞歯別天皇。
— 折口信夫 『貴種誕生と産湯の信仰と』 青空文庫
右の日本紀の本文によると、産湯の井の中に、虎杖の花が散り込んだので、多遅比といひ、歯がいかにも瑞々しい若皇子であるから、瑞歯別と称へた事になつてゐる。
— 折口信夫 『貴種誕生と産湯の信仰と』 青空文庫
だが、元来、多遅比の事に就ては、日本紀の伝へが、いさゝか矛盾してゐる。
— 折口信夫 『貴種誕生と産湯の信仰と』 青空文庫
恐らく多遅比の名称は、若皇子を御養育した多遅比氏(丹比氏)の名称であつて、つまり、丹比氏が養育し奉つたから、若皇子の御名を多遅比と称へたのであらう。
— 折口信夫 『貴種誕生と産湯の信仰と』 青空文庫
即、竹取型になる以前の形があつて、誉津部・多遅比部などの部曲伝承に近かつたものと思はれる。
— 折口信夫 『唱導文芸序説』 青空文庫