隠顕
いんけん
名詞
標準
文例 · 用例
磴たるや、山賊の構えた巌の砦の火見の階子と云ってもいい、縦横町条の家ごとの屋根、辻の柳、遠近の森に隠顕しても、十町三方、城下を往来の人々が目を欹れば皆見える、見たその容子は、中空の手摺にかけた色小袖に外套の熊蝉が留ったにそのままだろう。
— 泉鏡花 『縷紅新草』 青空文庫
あなやの間ではあるが、消えてはまた生まれ、あちらと思えばこちら、連続と隠顕と、ひととき眼を忙失させるけれども、なお眼を放たないなら、眺め入るものに有限の意識を泡にして、何か永遠に通じさすところがある。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
日光の隠顕するごとに、天の色はあるいは黒く、あるいは蒼く、濃緑に、浅葱に、朱のごとく、雪のごとく、激しく異状を示したり。
— 泉鏡花 『取舵』 青空文庫
東から北へと勾欄へついて眼を移すと、柔かな物悲しい赤と乾酪色の丘陵のうねりが閑かな日光の反射に浮き出してゐる隣に、二つの円い緑の丘陵が大和絵さながらの色調で竝んで、その一つの小高みに閑雅な古典的の堂宇が隠顕する。
— 北原白秋 『白帝城』 青空文庫
それには、あの魔法博士デイの奇法の数々が記されているのだが、その中で、マームズベリー卿を驚嘆させた隠顕扉の記録が載っていて、それが僕に、水で扉を開け――と教えてくれたのだ。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
「とにかく、魔法博士デイの隠顕|扉があるほどだからね。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
いずれにしても以上の二つからは、事件の隠顕両面に触れる重大な暗示をうけたのであったが、法水等三人は、それを将来に残して、薬物室を去らねばならなかった。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
まさかにジョン・デイ博士の隠顕扉が、そうザラにあるという訳じゃあるまい」「驚いたね」法水は皮肉な微笑を投げた。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫