帯一
おびいち
名詞
標準
文例 · 用例
途上遥か右方に褌を懸けたるがごとく、白帯一条の見ゆるは常布滝という。
— 井沢衣水 『本州横断 痛快徒歩旅行』 青空文庫
夏の暑い盛りだと下帯一つの丸裸で晩酌の膳の前にあぐらをかいて、渋団扇で蚊を追いながら実にうまそうに杯をなめては子供等を相手にして色々の話をするのが楽しみであったらしい。
— 寺田寅彦 『重兵衛さんの一家』 青空文庫
最後にその三人の従姉妹が、頭のもの、帯一本、指環を一ツ売ったという、二十円|余二月足らずの学資を達引いてくれたまでで、あわれ一|人は目を煩い、一人は気が狂ったようになり、いま一人は人に連れられて北海道に渡ったという、音信があって、それなりけり。
— 泉鏡花 『湯島詣』 青空文庫
若い者の取落したのか、下の帯一筋あったを幸に、それにて牛乳鑵を背負い、三箇のバケツを左手にかかえ右手に牛の鼻綱を取って殿した。
— 伊藤左千夫 『水害雑録』 青空文庫
働きのない良人に連れ添って、十五年の間丸帯一つ買ってもらえなかった叔母の訓練のない弱い性格が、こうさもしくなるのをあわれまないでもなかったが、物怯じしながら、それでいて、欲にかかるとずうずうしい、人のすきばかりつけねらう仕打ちを見ると、虫唾が走るほど憎かった。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
だれぞひとり、はようあのふた品をこれへ、残りはすぐさま水へくぐらっしゃい」 下知もろとも足軽たちが下帯一つになって、ひとりは命ぜられたとおりなぞのふた品を岸へ、あとの五人が水底めがけていっせいに飛び込もうとしたのを、「いや、場所がある。
— 毒を抱く女 『右門捕物帖』 青空文庫
うしろに右門がそれを手ぐすね引いて待っているとも知らず、おのおの腰帯一つになると、抜き手をきってつづきましたから、鋭く右門が杉弥に命じました。
— 村正騒動 『右門捕物帖』 青空文庫
「ところで、あの魔法のような隠身術も、底を割れば、たかがこの白い帯一つにすぎなかったのですよ」 検事とウルリーケを伴って、艇内に入ると、法水は、潜水服が吊されている一画を示した。
— 小栗虫太郎 『潜航艇「鷹の城」』 青空文庫