漂民
ひょうみん
名詞
標準
文例 · 用例
おぬしらは、この二月に州崎の浜へ流れついた漂民の話を聞いたろう」 駒三郎がいった。
— 久生十蘭 『ボニン島物語』 青空文庫
漂民の一人は大湊の船持ちで、思慮のある男だから、深く慎んで、滅多なことは言いださぬが、お上のほうでは、舟子どもが漂着したという島は、先年、物貨を取蒐めたその島だということを見ぬいている。
— 久生十蘭 『ボニン島物語』 青空文庫
「ご用でございますか」 国元へ届ける漂民に、差送りの役人がつくのは古くからの慣例だが、実誼な老人たちは、お上に無用の費いと煩いをかけているのだと思いこみ、すこしでも手数をはぶこうとさまざまに心を砕いているふうである。
— 久生十蘭 『ボニン島物語』 青空文庫
漂民が国へ帰れば、どういう扱いを受けるか、知っているだろう」 清兵衛は迷惑そうな顔をしていたが、「とりたてのない土地にいる百姓を、一人でも多く島へ引こうという、みなの意見で、私と庄吉と松太郎という手間取が使者に立った。
— 久生十蘭 『ボニン島物語』 青空文庫
「エカテリイナ號」は根室灣に碇泊して「宣諭使」の來着を待つこと八ヶ月のうち、同船で送還されてきた漂民數多も、ロシヤ人乘組員も、また日本側警備員たちも、多數壞血病で死んだ。
— 徳永直 『光をかかぐる人々』 青空文庫
そして漂民護送は容れられたが、やはり通商は拒絶、ロシヤ側の贈物も法規に基いて、全部長崎奉行からおくりかへされて、記録は「ラクスマンの「長崎へゆけば」は誤解であつたことが明瞭」になつただけであると云つてゐる。
— 徳永直 『光をかかぐる人々』 青空文庫
「モリソン號」の眞の目的が何であつたか、直接には日本漂民で尾張の船乘岩吉、久吉、音吉、同じく肥後の庄藏、壽三郎ら數名を本國へ護送することで日本の歡心を得、間接には日本通商の下心を得んとするにあつたらうと史家たちは云つてゐる。
— 徳永直 『光をかかぐる人々』 青空文庫
單に漂民の護送ならば長崎で充分であるものを、避けて江戸灣にむかつたのも、和蘭商館の妨害を懸念したことが考へられるなど、理由の一つである。
— 徳永直 『光をかかぐる人々』 青空文庫