按
あん
名詞
標準
文例 · 用例
十二 信如が何時も田町へ通ふ時、通らでも事は濟めども言はゞ近道の土手々前に、假初の格子門、のぞけば鞍馬の石燈籠に萩の袖垣しをらしう見えて、椽先に卷きたる簾のさまもなつかしう、中がらすの障子のうちには今樣の按察の後室が珠數をつまぐつて、冠つ切りの若紫も立出るやと思はるゝ、その一ツ構へが大黒屋の寮なり。
— 樋口一葉 『たけくらべ』 青空文庫
十二 信如が何時も田町へ通ふ時、通らでも事は済めども言はば近道の土手々前に、仮初の格子門、のぞけば鞍馬の石燈籠に萩の袖垣しをらしう見えて、椽先に巻きたる簾のさまもなつかしう、中がらすの障子のうちには今様の按察の後室が珠数をつまぐつて、冠つ切りの若紫も立出るやと思はるる、その一ト搆へが大黒屋の寮なり。
— 樋口一葉 『たけくらべ』 青空文庫
何処か向ふの方で、子供が二三人、按摩の笛の真似をしてゐるのが聞えた。
— ――飜弄さる 『蜻蛉』 青空文庫
それに猶、諸君も嫌ひではない冗舌は、此処に十分に按配されてをり、直き直きに抽象語を以てしなければ、かの「意味がない」と云つて嘯く、平盤な心情の人達のためには、十分哲学的学術的な言葉も此処には見出されるのである。
— 中原中也 『宮沢賢治全集』 青空文庫
あんまり強く、按摩をすると、彼女の胴体には穴が明くのであった。
— 葉山嘉樹 『労働者の居ない船』 青空文庫
入口の方を向つて、石油箱だの、ビール箱だの、ダイナマイトの箱だのが、上手に按配して積み上げられてゐた。
— 葉山嘉樹 『万福追想』 青空文庫
彼の説明は按摩のように人を柔らかにし、その疑いを解いたんだ。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
殊にも、あの、「つくしにね、鈴虫が鳴いてるって言ってやって」以来、僕の気持は急速にはりつめて来ているような按配なのだし、それにまた、君への手紙に、マア坊を好きだ好きだと書いてやった直後でもあるし、どうにも、かなわない、ぎこちない気分であった。
— 太宰治 『パンドラの匣』 青空文庫