揺落
ようらく
名詞
標準
文例 · 用例
馬の背に立つ巌、狭く鋭く、踵から、爪先から、ずかり中窪に削った断崖の、見下ろす麓の白浪に、揺落さるる思がある。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
死力を籠めて、起上ろうとすると、その渦が、風で、ごうと巻いて、捲きながら乱るると見れば、計知られぬ高さから颯と大滝を揺落すように、泡沫とも、しぶきとも、粉とも、灰とも、針とも分かず、降埋める。
— 泉鏡花 『雪霊続記』 青空文庫
滴声しきりなれども雨はすでに止みたりとおぼし」同二十三日――「昨夜の風雨にて木葉ほとんど揺落せり。
— 国木田独歩 『武蔵野』 青空文庫
芥川氏の来たのは晩春の候で、槐や柳の青々した風景を叙してあるが、わたしがここに立寄ったのは、秋もようやく老いんとする頃で、梧桐はもちろん、槐にも柳にも物悲しい揺落の影を宿していた。
— 岡本綺堂 『女侠伝』 青空文庫
十月二十日落葉われもまた老いにけらしな爛漫と咲きほこる春の花よりも今揺落の秋の暮梢を辞して地にしける枯葉さま/゛\拾ひ来て染まれる色を美しと見る十一月五日落葉拾來微細見 拾ひ来りて微細に見れば、落葉美於花 落葉花よりも美なり。
— 河上肇 『閉戸閑詠』 青空文庫
その動揺落胆はむしろ恐ろしいのである。
— 本庄陸男 『石狩川』 青空文庫
梧桐、芭蕉、柳など詩や句に揺落を歌はるるものは、みな思ひの外散る事遅し。
— 芥川龍之介 『雑筆』 青空文庫
生憎当今嚢中逼迫、イヤ、心緒揺落に逢ひ秋声聞くべからざる有様ぢや。
— 坂口安吾 『金談にからまる詩的要素の神秘性に就て』 青空文庫