紅染
べにぞめ
名詞
標準
文例 · 用例
麦やや青く、桑の芽の萌黄に萌えつつも、北国の事なれば、薄靄ある空に桃の影の紅染み、晴れたる水に李の色|蒼く澄みて、午の時、月の影も添う、御堂のあたり凡ならず、畑打つものの、近く二人、遠く一人、小山の裾に数うるばかり稀なりしも、浮世に遠き思ありき。
— 泉鏡花 『一景話題』 青空文庫
このあたりあさのとりいれにて、いそがしぶる乙女のなまじいに紅染のゆもじしたるもおかしきに、いとかわゆき小女のかね黒々と染ぬるものおおきも、むかしかたぎの残れるなるべしとおぼしくて奇なり。
— 幸田露伴 『突貫紀行』 青空文庫
七月九日定稿途上所見夕陽將欲沒 夕陽将に没せんとして、紅染紫霄時 紅、紫霄を染むる時、弄色西山好 色を弄して西山好し、乾坤露玉肌 乾坤玉肌を露はす。
— 河上肇 『閉戸閑詠』 青空文庫
これはちょうど榕樹の陰に、幼な児を抱いていたのですが、その葉に後を遮られたせいか、紅染めの単衣を着た姿が、夕明りに浮んで見えたものです。
— 芥川龍之介 『俊寛』 青空文庫
紅染めの裳を着て、裳裾をひいて遊んでゐる妻の容姿は、狐といへど窈窕としてゐたので、夫は去りゆく妻を戀ひしたつて、二人の中には子がある。
— 長谷川時雨 『春宵戲語』 青空文庫
ことに同じ染物屋でも、当初から純粋に植物性染料を用いた紅染屋の如きは、決して賤しいものとはされていなかったのである。
— 喜田貞吉 『エタ源流考』 青空文庫
樹が低く、その枝端に群集して着いている実は秋に紅染し、緑葉に反映して人の眼をひく、すなわちこの実には臭気がありそれが薬用となる。
— 牧野富太郎 『植物一日一題』 青空文庫