頂天
ちょうてん
名詞
標準
文例 · 用例
野景弓なりにしなつた竿の先で小魚がいつぴき ぴちぴちはねてゐるおやぢは得意で有頂天だがあいにく世間がしづまりかへつて遠い牧場では牛がよそつぽをむいてゐる。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫
その當時、悦びで有頂天になつた自分の姿が、あさましくも馬鹿らしくも思はれた、『あれはやつぱり一種の病熱からみた幻影にすぎなかつたのぢやないか』『あれは何でもない錯覺の類ぢやないのか』『自分は喜劇を演じたのぢやなかつたか』かういふ疑問が私を皮肉的に嘲笑し始めた。
— 萩原朔太郎 『散文詩・詩的散文』 青空文庫
しかも悦びで有頂天になつてゐる騎士たちは、だれ一人としてその事實に氣のついた者はなかつた。
— 萩原朔太郎 『散文詩・詩的散文』 青空文庫
「あたくしは映画劇に対する使命を………、」殆んど有頂天にそれを言つてしまつてゐた。
— ――飜弄さる 『蜻蛉』 青空文庫
降りくる悲しみを少しもうけとめないで、安易で架空な有頂天を幸福と感じ做し自分を売る店を探して走り廻るとは、なんと悲しく悲しいことだ……3神よ私をお憐み下さい!
— 中原中也 『寒い夜の自我像』 青空文庫
女がいたり、酒があるということは三上を有頂天にした。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
ところが、ホンコン入港の時に、密航婦を、フォーアピークへ移しかえることを忘れなかったボースンは、何と考え違いしたものか、大切のシンガポーアで、有頂天になり過ぎていて、密航婦を、チエンロッカーから出すことを忘れてしまった。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
人に飢えた船のりはもう有頂天にされてしまったのであった。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫