蒔岡
蒔岡
名詞
標準
文例 · 用例
先方は謙遜して、蒔岡さんと私とでは身分違いでもあり、薄給の身の上で、そう云う結構なお嬢様に来て戴けるものとも思えないし、来て戴いても貧乏所帯で苦労をさせるのがお気の毒のようだけれども、万一縁があって結婚出来るならこんな有難いことはないから、話すだけは話してみてほしいと云っている。
— 上巻 『細雪』 青空文庫
お宅さんは旧家でおありになるし、大阪で「蒔岡」と云えば一時は聞えていらしったに違いないけれども、―――こう申しては失礼であるが、いつ迄もそう云う昔のことを考えておいでになっては、結局お嬢様が縁遠くおなりになるばかりだから、大概なところで御辛抱なすったらいかがであろうか。
— 上巻 『細雪』 青空文庫
だから「昔のことを考えるな」と云う井谷の言葉は、ほんとうに為めを思った親切な忠告なので、蒔岡の家が全盛であったのはせいぜい大正の末期までのことで、今ではその頃のことを知っている一部の大阪人の記憶に残っているに過ぎない。
— 上巻 『細雪』 青空文庫
そして養父の死後、義妹たちや親戚などの反対を押し切って、まだ何とか蹈ん張れば維持出来たかも知れなかった店の暖簾を、蒔岡家からは家来筋に当る同業の男に譲り、自分は又もとの銀行員になった。
— 上巻 『細雪』 青空文庫
そして豊橋の三枝家ならば格式から云っても申分はないし、現在の蒔岡家に取っては分に過ぎた相手であるし、本人も至って好人物であるからと、見合いをするまでに話を進行させたのであったが、雪子はその人に会って見て、どうにも行く気になれなかったのであった。
— 上巻 『細雪』 青空文庫
今夜は商売のことは忘れてゆっくりと御馳走になりたいもんですな」幸子は娘の時分に、船場の蒔岡の店にもこう云う型に属する剽軽な禿頭の番頭がいたことを思い出した。
— 上巻 『細雪』 青空文庫
まあいつもよりは幾らか口数が多くなるくらいなもんでしょうかな」「では蒔岡さんのお嬢さんは」「お嬢さんはピアノをなさるんですの」と、井谷が答えた。
— 上巻 『細雪』 青空文庫
「蒔岡さんのお宅では、皆さん音楽は西洋趣味でいらっしゃいましてね」「いいえ、そうばかりでも………」と、幸子が云った。
— 上巻 『細雪』 青空文庫