錦糸
きんし
名詞
標準
文例 · 用例
T「大勢を手に掛けたとあって、 錦糸堀五百石の御邸は 御取り潰しになり……」 「とうとう浪人生活」と云えば、五郎蔵「そりゃそうだろう」半次尚も、T「その上、 そのおきよって女が 見掛けによらんあばずれでしてね」 と話し続ける半次。
— 山中貞雄 『中村仲蔵』 青空文庫
」T「大吉が俺がまこと武士なら 先祖伝来の千五百石 戴いて、錦糸堀に くすぶってるわ」 と言い放ち、更に、T「有難い事に 俺は武士じゃない」 半次が「武士でなかったら何ですい」 大吉、T「自由気儘の 悪たれ小僧よ」 言い度い事言って了うと大吉出掛けようとするので、 五郎蔵がとめた。
— 山中貞雄 『中村仲蔵』 青空文庫
午後になると、おいてき堀といわれる錦糸堀の原っぱへ出かけて行く。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
彼は日本橋の国府へ納める荷物の中に、幾割かのロオズ物があり、それを回収して、場末の二流三流の商店へ卸すために、時々東京へ出るので、このころにもそのついでに、罐詰を土産に、錦糸堀の銀子の家を訪ね、荷はいくらでも送るから、罐詰の店を出してはどうかと、親父に勧めたりしたものだった。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
」 夏父親がやって来た時、彼は東京へ出るたびに、罐詰を土産に親類か何ぞのように錦糸堀の家へ上がりこみ、朝からお昼過ぎまで居座る罐詰屋のことを、そんなふうに怒っていた。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
四 藤川の女将の斡旋で若林の話がきまった晩、彼は別れぎわに小遣を三十円ばかり銀子に渡し、あまり無駄使いしないようにと言って帰ったのだったが、その晩は銀子も家の侘しいお膳で、お茶漬で夜食をすまし、翌朝割引電車で、錦糸堀の家へ帰ると、昨夜もらった手付かずの三十円をそっくり母親に渡した。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
十三 しかし銀子の生命の火はまだ消え果てず、二日ばかりすると、医師が動かしてはいけないというのを、彼女の希望どおり春よしの二階から担架でおろされ、寝台車で錦糸堀の家の二階へと移された。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
銀子がたまに見番の札を卸し、用事をつけて錦糸堀へやって来ると、彼女は一丁目ばかり手前の焼鳥屋の暖簾のうちに立っており、銀子がよく似た姿だと思って、近づいて声をかけると、時子はその声が懐かしく、急いで暖簾から出て来るのだった。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫