開け閉て
あけたて
名詞
標準
文例 · 用例
障子の開け閉てにその娘が欄干に凭れて中庭越しにこっちの部屋を伏目で眺めて居る姿が無意識の眼に映るけれども、私はそれどころでなく書きに書いて心積りした通り首尾よく大晦日の除夜の鐘の鳴り止まぬうちに書き上げた。
— 岡本かの子 『健康三題』 青空文庫
ひとつ西山のいったことを話題にして話し合ってみよう」 いつも部屋の中でも帽子を取ることをしない小さな森村が、眉と眉との間をびくびく動かしながら、乾ききった唇を大事そうに開け閉てした。
— 有島武郎 『星座』 青空文庫
あたりを活気づけるようなものは何ひとつ見あたらず――扉が開け閉てされるでもなければ、何処からひとり出て来る人影もなく、住家らしい生き生きとしたいそしみの気配は何も感じられない!
— または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊 『死せる魂』 青空文庫
柱だけが一抱へもある程の自然木で組まれて、開け閉ての出来る戸といふものを持たなかつた。
— 牧野信一 『沼辺より』 青空文庫
ガラガラ……バタンバタン……暫く扉を開け閉てする音が聞えていたが、やがて悲しげな顫える声が「……せ、せんせいィ……大変だァ……」と四号室から一号室へ、続く廊下を押切って、まだ寝ている母屋のほうへバタバタと駈けこんで行った。
— 大阪圭吉 『三狂人』 青空文庫
六 お初が、怒りと恋慕とを新たにして、後れ毛を前歯で噛みしめたり、吐き出したりしているところへ、また、縄梯子の軋む音がして、木ぶすまが、開け閉てされ、「うう、寒い。
— 三上於菟吉 『雪之丞変化』 青空文庫
細い身体が煙のように揺れたかとおもうと、枕頭の障子を音もなく開け閉てして、そのまま縁側へ消えてしまった。
— 怪談抜地獄 『釘抜藤吉捕物覚書』 青空文庫
彼はこうして洋傘を開け閉てしながらも、今熊が飛びかかるか、今飛びかかるかと冷々して、静かに近づいて行ったのです。
— 久米正雄 『熊』 青空文庫