悽
悽
名詞
標準
文例 · 用例
太陽は埃に暗く悽而たる竹藪の影人生の貧しき慘苦を感ずるなり。
— 萩原朔太郎 『氷島』 青空文庫
さうした芥川君の談話は、異常に悽愴の氣を帶びてゐた。
— 萩原朔太郎 『芥川龍之介の死』 青空文庫
自分は彼の作品について、時にしばしば一種の鬼氣を――支那の言語で、丁度「鬼」といふ字が表象する所の悽愴感を――感じてゐた。
— 萩原朔太郎 『芥川龍之介の死』 青空文庫
先生がひどく悽然とした様子をしていらっしゃるのを見たため、先生を慰めるつもりで心にもない嘘をついたのである。
— 太宰治 『惜別』 青空文庫
あてにしていた夢が、かたっぱしから全部はずれて、大穴あけて、あの悽惨、焦躁、私はそれを知っている。
— 太宰治 『春の盗賊』 青空文庫
この時、戀もなければ失戀もない、たゞ悽愴の感に堪えず、我生の孤獨を泣かざるを得なかつた。
— 国木田独歩 『湯ヶ原より』 青空文庫
頭の上の眞黒に繁つた枝から水がぼた/\落ちる、墓穴のやうな溪底では水の激して流れる音が悽く響く。
— 国木田独歩 『湯ヶ原より』 青空文庫
富藏は疑はないでも、老夫婦の心は分つて居ても、孤家である、この孤家なる言は、昔語にも、お伽話にも、淨瑠璃にも、ものの本にも、年紀今年二十になるまで、民子の耳に入つた響きに、一ツとして、悲慘悽愴の趣を今爰に囁き告ぐる、材料でないのはない。
— 泉鏡花 『雪の翼』 青空文庫