金茶
かねちゃ
名詞
標準
文例 · 用例
朝日を反映さする金茶色の唐松と、輝やく紅葉――そのくせ、もう枯れ枯れに萎び返って、葉の尖はインキを注したように、黒くなって、縮れている――で、夏ならば緑一色のちょんぼりした林が、今朝は二、三倍も広くなったような気がする。
— 小島烏水 『雪中富士登山記』 青空文庫
」と抱いて出た掻巻の、それも緋と浅黄の派手な段鹿子であったのを、萌黄と金茶の翁格子の伊達巻で、ぐいと縊った、白い乳房を夢のように覗かせながら、ト跪いてお孝の胸へ。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
中は八畳に寝床を二ツ、くくり枕の傍には、盆の上に薬の瓶、左の隅に衣桁があって、ここに博多の男帯、黒|縮緬の女羽織、金茶色の肩掛など、中にも江戸|褄の二枚小袖、藤色に裳を曳いて、襲ねたままの脇開を、夜目にも燃ゆる襦袢の袖、裙にもちらめく紅梅に、ちらりと白足袋が脱いであり。
— 泉鏡花 『わか紫』 青空文庫
面の平でない玻璃の爲めに、水|淺葱に金茶の模樣が陽炎を透かしての如くきらきらといかにも氣持よく見える。
— 木下杢太郎 『京阪聞見録』 青空文庫
それは胡麻白の頭と金茶の胸毛と真黒な翼とを持つた小鳥で、両肩のあたりに真白な刺毛が際立つて光つてゐるので、まるで紋付羽織でも一着に及んでゐるやうな恰幅だ。
— 薄田泣菫 『独楽園』 青空文庫
――」 と、低い調子で歌ひながら、金茶の胸当に紋付羽織の着付で、弾機細工か何かのやうに愛嬌たつぷりにぴよこぴよこと胡麻白の頭を下げどほしに下げてゐる。
— 薄田泣菫 『独楽園』 青空文庫
あの金茶色の胸毛に包まれた小さな魂のいたいたしいまでの善良さを少しでも傷けるやうなことがあつては、人間にとつて大きな恥辱だといはなければならない。
— 薄田泣菫 『独楽園』 青空文庫
庭には天鵞絨を敷いたような青あおした草が生えて、玄関口と思われる障子に燈の点いた方には、凌霄の花のような金茶色の花が一めんに垂れさがった木が一本立っていた。
— 田中貢太郎 『蟇の血』 青空文庫