繊々
繊々
名詞
標準
文例 · 用例
あはれ、この少女のこころは恒に狭き胸の内に閉ぢられて、こと葉となりてあらはるる便なければ、その繊々たる指頭よりほとばしり出づるにやあらむ。
— 森鴎外 『文づかひ』 青空文庫
あわれ、この少女のこころはつねに狭き胸のうちに閉じられて、ことばとなりてあらわるる便なければ、その繊々たる指さきよりほとばしり出ずるにやあらん。
— 森鴎外 『文づかい』 青空文庫
その間に繊々としてかかる新月の美しさ。
— 鈴慕の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
琵琶湖の対岸の山々、雪は白し比良ヶ岳の一角から、法燈の明るい比叡の山あたりの連脈と見ておけばよろしい、その上の空へ繊々たる新月がかかりました。
— 新月の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
満月が老い、朽ち、衰えて新月となるのではなく、満月が研がれ、磨かれ、洗われ、練られ、鍛えられつくして、その精髄があの新月の繊々たる色と形とをとって現われるのであります。
— 新月の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
そうして、いつもこういう時に、念頭に上って来るのは、唐詩の繊々初月上鴉黄という句なのであります。
— 新月の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
繊々たる初月、鴉黄に上る 初月は即ち新月であって、その文字の選び方に於て、少しも原意を損ずることはないのみならず、繊々たるという畳語のほかに、初月そのものを形容する漢字はないといってもよいくらいです。
— 新月の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
だが、お銀様にとっては、この「繊々初月上鴉黄」という一句が、また、なかなかに恨みの余音を残している一句でありました。
— 新月の巻 『大菩薩峠』 青空文庫