照灯
しょうとう
名詞
標準
文例 · 用例
わたくしが進めば進んだだけわたくしの身に持つ探照灯で照らし出すように、ほゞ一町四方の間の町も灯も人も、嵐の前の花野化されて行きます。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
そしてこの圏の前後左右は、ちょうどわたくしが過去や未来を心の中で憶測したと同じ美しい朦朧を湛えて、わたくしの身に持つ探照灯が照らし進めば照らし破るに任せ、照らし終ればまた元通り、美しい朦朧に閉じ去って、一針の縫目も見せず、相変らずそれは晩春の闇の夜町の遠見になります。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
その花火の光を奪うようにどこからか探照灯がひらひらと閃いて来て、真黒にうず巻いている人々の帽子や顔を蒼白く照して通る。
— 岡本綺堂 『倫敦の一夜』 青空文庫
そうしてどこからか一筋の日光が射して来ないかしらんという希望よりも、こちらから探照灯を用いてたった一条で好いから先まで明らかに見たいという気がしました。
— 夏目漱石 『私の個人主義』 青空文庫
テーブルよりも丈が低いと見えて、児の姿は、自分が首を探照灯のやうにして彼方此方に視線を放つたが、頭も見えなかつた。
— 牧野信一 『冬の風鈴』 青空文庫
最初にわたしがその吹奏の歌を聞きはじめたのは、未だあたりは冬の霧が深く、海の上から放たれる探照灯の翼が崖の側面にあたると、凍てついた氷山に対する稲妻のやうに見えた頃であつた。
— 牧野信一 『緑の軍港』 青空文庫
彼の視神経は忽ち緊張し、彼の視線は急速度で旋廻する探照灯のように前後左右へ旋廻した。
— 平林初之輔 『山吹町の殺人』 青空文庫
はるか宇品の方の空では探照灯が揺れ動いている夕闇の校庭に立たされて、予備少尉の話をきかされている時、正三は気もそぞろであった。
— 原民喜 『壊滅の序曲』 青空文庫