衣袂
いべい
名詞
標準
文例 · 用例
併し鵲の橋の上に立つてゐると瀧が近いので、瀧飛沫は冷やかに領に下ちて衣袂皆しめり、山風颯然として至つて、瀧のとゞろき、流の沸りと共に、人をして夏のいづこにあるかを忘れしむるところ、捨て難いものがある。
— 幸田露伴 『華嚴瀧』 青空文庫
乘りおくれたるものは、浪にうたれて、衣袂悉く沾ふ。
— 大町桂月 『金華山』 青空文庫
稲荷山といふ処にて雨ふりいでたれば、日はくれぬ雨はふりきぬ旅衣袂かたしきいづくにか寝ん つぐの日雨晴る。
— 正岡子規 『かけはしの記』 青空文庫
日光水面を射て、まぶしさ堪えがたかりしも、川風そよそよと衣袂を吹き、また汗を拭う要無し。
— 石井研堂 『大利根の大物釣』 青空文庫
唯、蚊の襲来の多からざると、涼風衣袂に満ちて、日中の炎塵を忘るるとは、最も快適の至りにして、殊に、ここ暫くの勝負と思えば、神新に気更に張る。
— 石井研堂 『大利根の大物釣』 青空文庫
私は甲板の腰掛に腰を下して海風の衣袂を翻すに任している。
— 高浜虚子 『別府温泉』 青空文庫
江戸の街々も、初夏らしい活氣に漲つて、急ぎ足の三人の衣袂に風が薫じます。
— 和蘭の銀貨 『錢形平次捕物控』 青空文庫
外へ出ると晩秋の風が爽やかに衣袂に薫じて、狭い狭い路地にも、江戸の裏町らしい活気は漲ります。
— 腰抜け彌八 『銭形平次捕物控』 青空文庫