腸
わた異読 ワタ
名詞頻度ランク #9341 · 青空 1371 例
標準
entrails
文例 · 用例
四 私と同級生で特待生のMが私の内に十二指腸で入院した。
— 中原中也 『その頃の生活』 青空文庫
聲最も悲しく、わが心すべて斷腸せり。
— 萩原朔太郎 『氷島』 青空文庫
やゝ曇り初めし空に篁の色いよ/\深くして清く静かなる里のさまいとなつかしく、願わくば一度は此処にしばらくの仮りの庵を結んで篁の虫の声|小田の蛙の音にうき世の塵に汚れたる腸すゝがんなど思ううち汽車はいつしか上り坂にかゝりて両側の山迫り来る。
— 寺田寅彦 『東上記』 青空文庫
二ノ池の方に廻る、池には石が座榻のように不規則に、水面に点じている、岸には淡紅の石楠花が水に匂う、蛇紋が掻き破られて、また岩魚が飛ぶ、石楠花の雫を吸っている魚だから、腸まで芳芬に染まっていないかとおもう。
— 小島烏水 『梓川の上流』 青空文庫
掘鑿の中は、雪の皮膚を蹴破って大地がその黒い、岩の大腸を露出していた。
— 葉山嘉樹 『坑夫の子』 青空文庫
凍る深夜の白い息吐きが――そしてたちまちはげしい自棄の嘆きが荒く飛んで聴衆はほとんど腸を露出するまでに彼女の唄の句切りに切りさいなまれると、其処に抉出される人々の心のうずきはうら寂びた巴里の裏街の割栗石の上へ引き廻され、恥かしめられ、おもちゃにされる。
— 岡本かの子 『巴里の唄うたい』 青空文庫
愛別離苦の悲しみと偉大なものに生命を賭ける壮烈な想いとで翁の腸は一ねじり捩れた。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
娘の神が捧げて過ぎた机代のものの中で、平手に盛った宇流志禰の白い色、本陀理に入れたにいしぼりの高い匂いが、自分に絶望しかけて凡欲の心に還りつつある翁の眼や鼻から餓えた腸にかぐわしく染みた。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫