黴臭い
かびくさい
形容詞
標準
文例 · 用例
けだし彼等にとってみれば、あの黴臭い古都の空気ほど、没趣味で散文的なものは宇宙にないのだ。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
低い天井と床板と、四方の壁とより外には何にも無いようなガランとした、湿っぽくて、黴臭い部屋であった。
— 葉山嘉樹 『淫賣婦』 青空文庫
その度ごとに本屋の書架から手頃らしいと思われる註釈本を物色しては買って来て読みかけるのであるが、第一本文が無闇に六かしい上にその註釈なるものが、どれも大抵は何となく黴臭い雰囲気の中を手捜りで連れて行かれるような感じのするものであった。
— 寺田寅彦 『変った話』 青空文庫
修学証書や辞令書のようなものの束ねたのを投げ出すと黴臭い塵が小さな渦を巻いて立ち昇った。
— 寺田寅彦 『厄年と etc.』 青空文庫
T君に別れて東照宮前の方へ歩いて来ると異様な黴臭い匂が鼻を突いた。
— 寺田寅彦 『震災日記より』 青空文庫
」 一方では、物置きなどへは持って行った記憶がないのを十分知っていながら、単なる気持を頼って、暗い、黴臭い物置きへ這入って探しまわった。
— 黒島傳治 『窃む女』 青空文庫
彼は黴臭い旅籠の蒲團の上で轉輾した。
— 梶井基次郎 『川端康成第四短篇集「心中」を主題とせるヴァリエイシヨン』 青空文庫
しかし今更、宗教などという黴臭いと思われるものに関る気はないし、そうかといって、夫人のいったまこととかまごころとかいうものを突き詰めて行くのは、安道学らしくて身慄いが出るほど、怖気が振えた。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫