履音
履音
名詞
標準
文例 · 用例
それから二十分経つて、増田氏の自動車がある宴会の式場へ横づけになると、氏はいつの間にか婦人雑誌の口絵から抜け出して来たやうな絹帽にフロツクコートといふ、りうとした身装で、履音軽く扉のなかから出て来る。
— 大正五(一九一六)年 『茶話』 青空文庫
暫くは舞台の端に立つて、鉛筆のやうに真直になつてゐたが、急に履音を蹴立ててフロオマンの前へ出て来た。
— 大正六(一九一七)年 『茶話』 青空文庫
暫くすると、ぞろぞろ信者の入つて来るらしい履音がした。
— 大正六(一九一七)年 『茶話』 青空文庫
暁がた、男は一人で庭に降り立って、ほんのりとかかった繊い月を仰ぎ仰ぎ、読経などをしながら、履音をしのばせてそぞろ歩きしていた。
— 堀辰雄 『姨捨』 青空文庫
「なにさまで思ひ出でけむなほざりの木の葉にかけし時雨ばかりを」 その時その細殿の方へ履音を響かせながら、五六人の殿上人たちが男を追うようにやって来た。
— 堀辰雄 『姨捨』 青空文庫
男は殿上人たちに拉せられながら、細殿の前に漂っていた丁子の匂を気にでもするように、その方を見返りがちに、再び履音をさせながら其処を立ち去って往った。
— 堀辰雄 『姨捨』 青空文庫