御茶漬け
おちゃづけ
名詞
標準
文例 · 用例
」 と低声でたしなめるように云った、(先刻のあんなもの)は――鮪の茶漬で――慶喜公の邸あとだという、可懐しいお茶屋から、わざと取寄せた午飯の馳走の中に、刺身は江戸には限るまい、と特別に夫人が膳につけたのを、やがてお茶漬で掻込んだのを見て、その時は太く嬉しがった。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
……桑名の殿様|時雨でお茶漬……とか言う、土地の唄でも聞こうではないかの。
— 泉鏡花 『歌行燈』 青空文庫
お茶漬をたべて、夕刊を読んだ。
— ――ひそひそ聞える。なんだか聞える。 『鴎』 青空文庫
実は、少しからだの工合いおかしいのでして、などと、せっぱつまって、伏目がちに、あわれっぽく告白したりなどするのだが、一日にバット五十本以上も吸い尽くして、酒、のむとなると一升くらい平気でやって、そのあとお茶漬を、三杯もかきこんで、そんな病人あるものか。
— 太宰治 『懶惰の歌留多』 青空文庫
こゝの店の名物だという菊の花の味噌漬を飯の上に載せたお茶漬けを食べていますと、川づらでぴよ/\と鳴く声が頻りに聞えます。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
私は木綿の厚司に白い紐の前掛をつけさせられ、朝はお粥に香の物、昼はばんざいといって野菜の煮たものか蒟蒻の水臭いすまし汁、夜はまた香のものにお茶漬だった。
— 織田作之助 『アド・バルーン』 青空文庫
しかし、日本の文学の考え方は可能性よりも、まず限界の中での深さということを尊び、権威への服従を誠実と考え、一行の嘘も眼の中にはいった煤のように思い、すべてお茶漬趣味である。
— 織田作之助 『可能性の文学』 青空文庫
脂っこい小説に飽いてお茶漬け小説でも書きたくなったというほど、日本の文学は栄養過多であろうか。
— 織田作之助 『可能性の文学』 青空文庫