象眼
ぞうがん
名詞
標準
文例 · 用例
「この銀杏が秋になると黄鼈甲いろにどんより透き通って、空とすれすれな梢に夕月が象眼したように見えることがあります」 おっとりとそんな説明をする時の規矩男の陰に、いつも規矩男から聞いたその母の古典的な美しい俤も沁々とかの女に想像された。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
母の部屋は階下の十二畳に続く六畳ですが、まず壁には牡丹に唐獅子の附いている浮彫の額縁の中に、大礼服を着た父と自分と並んだ写真を入れて麗々しく飾り立て、その下に黒檀に象眼のある支那ものらしい茶棚が並べられてあります。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
そして何物もない靜かな空は象眼細工のやうに細い月がかかつてゐたのである。
— 素木しづ子 『三十三の死』 青空文庫
そして仏蘭西から輸入されたと思われる精巧な頸飾りを、美しい金象眼のしてある青銅の箱から取出して、クララの頸に巻こうとした。
— 有島武郎 『クララの出家』 青空文庫
)その留守の間にも水車は長閑かに廻り、町端れの飾屋の爺は大きな鼈甲縁の眼鏡をかけて、怪しい金象眼の愁にチンカチと鎚を鳴らし、片思の薄葉鉄職人はぢりぢりと赤い封蝋を溶かし、黄色い支那服の商人は生温い挨拶の言葉をかけて戸毎を覗き初める。
— 北原白秋 『水郷柳河』 青空文庫
下版後紙型にまで、わたくしの不滿が夥しい象眼や組み替を強行せしめることになつた。
— 北原白秋 『白南風』 青空文庫
下版後紙型にまで、わたくしの不満が夥しい象眼や組み替を強行せしめることになつた。
— 北原白秋 『白南風』 青空文庫
住まいは目と鼻の先浅草|聖天町、名人かたぎも名人かたぎでしたが、読んで字のごとく、鍔の裏と表に柿の金象眼を実際の数で千個刻みつけるために、早く仕上がって一年半、少し長引けば三カ年、したがってそのこしらえた今までの千柿鍔も、六十歳近いこのときまでに、せいぜい十個か十五個くらいのものでした。
— 千柿の鍔 『右門捕物帖』 青空文庫