渓合
けいあい
名詞
標準
文例 · 用例
道が薄暗い渓合に入って来ると、女は気づかわしそうに言葉をかけた。
— 薄田泣菫 『艸木虫魚』 青空文庫
こんな寂しい渓合を、あなたとたった二人で連立って歩いていて、もしかあなたが力ずくで接吻でもなすったら、どうしようかしら。
— 薄田泣菫 『艸木虫魚』 青空文庫
渓は深く、樅の梢がすくすくと屹えているだけで、高い高い崖の雪路までは見えたが、上は同じく真白な雲にかくれて、日暮れに近い渓合いに、花やかなのは電車の明りばかりで、ボッソンの氷河も知らずに、シャモニーの停車場に着いたのは午後五時。
— 辻村伊助 『スウィス日記』 青空文庫
十一時四十分、大窓裏の雪渓合流点。
— 木暮理太郎 『黒部川奥の山旅』 青空文庫
川上の荘の口碑を集めたある書物によると、南朝の遺臣等は一時北朝方の襲撃を恐れて、今の大台ヶ原山の麓の入の波から、伊勢の国境大杉谷の方へ這入った人跡稀な行き留まりの山奥、三の公谷と云う渓合いに移り、そこに王の御殿を建て、神璽はとある岩窟の中に匿していたと云う。
— 谷崎潤一郎 『吉野葛』 青空文庫
そうしてその葉が、峰と峰との裂け目から渓合いへ溢れ込む光線の中を、ときどき金粉のようにきらめきつつ水に落ちる。
— 谷崎潤一郎 『吉野葛』 青空文庫
朝づく日峯をはなれつわが歩む溪間のわか葉青みかがやく朝づく日さしこもりたる溪の瀬のうづまく見つつ心しづけき溪合にさしこもりつつ朝の日のけぶらふところ藤の花咲けり荒き瀬のうへに垂りつつ風になびく山藤の花の房長からず 溪間と云へばおほく其處に多い温泉を見逃がすわけにはゆかぬ。
— 若葉の頃と旅 『樹木とその葉』 青空文庫