羽ばたき
はばたき
名詞
標準
文例 · 用例
その笛の音こそはプラトオのエロス――靈魂の實在にあこがれる羽ばたき――である。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
朝のつめたい臥床の中で私のたましひは羽ばたきをするこの雨戸の隙間からみればよもの景色はあかるくかがやいてゐるやうですされどもしののめきたるまへ私の臥床にしのびこむひとつの憂愁けぶれる木木の梢をこえ遠い田舍の自然からよびあげる鷄のこゑですとをてくう、とをるもう、とをるもう。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
わたしは鶉のやうに羽ばたきながらさうして丈の高い野茨の上を飛びまはつたああ 雲よ 船よ どこに彼女は航海の碇をすてたかふしぎな情熱になやみながらわたしは沈默の墓地をたづねあるいたそれはこの草叢の風に吹かれてゐるしづかに 錆びついた 戀愛鳥の木乃伊であつた。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
白い牡鷄わたしは田舍の鷄ですまづしい農家の庭に羽ばたきし垣根をこえてわたしは乾からびた小蟲をついばむ。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
ああ この冬の日の陽ざしのかげにさびしく乾地の草をついばむわたしは白つぽい病氣の牡鷄あはれな かなしい 羽ばたきをする生物です。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
黒い蝙蝠わたしの憂鬱は羽ばたきながらひらひらと部屋中を飛んでゐるのです。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫
あたらしい座敷のなかで 蝶が翼をひろげてゐる白い あつぼつたい 紙のやうな翼をふるはしてゐる黒い蝙蝠わたしの憂鬱は羽ばたきながらひらひらと部屋中を飛んでゐるのです。
— 萩原朔太郎 『定本青猫』 青空文庫
その私の心はばたばたと羽ばたきして小鳥の死ぬるときの 醜いすがたのやうだ。
— 萩原朔太郎 『定本青猫』 青空文庫