峙
峙
名詞
標準
文例 · 用例
「粋な浮世を恋ゆえに野暮にくらすも心から」というときも、恋の現実的必然性と、「いき」の超越的可能性との対峙が明示されている。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
劃時代的な二つの階級間の闘争が、全市から全日本の相互の階級を総動員して相対峙していたのだ。
— 葉山嘉樹 『生爪を剥ぐ』 青空文庫
両々|相対峙して譲らず、一時はこのために会が決裂するかとも思われたが、その時、座長の近衛篤麿公が、やおら立ち上って、支那の革命を主張せられる御意見も、また、清朝を支持し列国の分割を防止せむとせられる御意見も、つまるところは他国に対する内政干渉であって、会の目的としては甚だ面白くない。
— 太宰治 『惜別』 青空文庫
三七七八米の富士の山と、立派に相対峙し、みぢんもゆるがず、なんと言ふのか、金剛力草とでも言ひたいくらゐ、けなげにすつくと立つてゐたあの月見草は、よかつた。
— 太宰治 『富嶽百景』 青空文庫
第四 決闘の勝敗の次第をお知らせする前に、この女ふたりが拳銃を構えて対峙した可憐陰惨、また奇妙でもある光景を、白樺の幹の蔭にうずくまって見ている、れいの下等の芸術家の心懐に就いて考えてみたいと思います。
— 太宰治 『女の決闘』 青空文庫
二ツの市街が岸のはなで睨み合って対峙している。
— 黒島伝治 『国境』 青空文庫
こうして数刻を経た後ガロンは共産軍を組織し、陳独秀の率いた工人と苦力の暴民を合して南北の橋路に支那軍隊と衝突して河畔に対峙し遂に市街戦となり、各国の陸戦隊が出動して共産軍は撃退され、一時間後上海は平穏に還った。
— 吉行エイスケ 『地図に出てくる男女』 青空文庫
けれども矗とか峻とかいう峙ちようではなく、どこまでも撫で肩の柔かい線である。
— 岡本かの子 『東海道五十三次』 青空文庫