鋳直
いじか
名詞
標準
文例 · 用例
その場合には、甲の頭の中にはちゃんとAの鋳型のようなものが出来ているので、BCDの中に、ちょっとでもAに似たところがあると、その点をつかまえて、Aの鋳型にあてがって、そうして他の部分をその型に鋳直してしまうらしい。
— 寺田寅彦 『観点と距離』 青空文庫
あとの残りは気に入らないといって彫りかけの材料をみな鋳直した。
— 岡本かの子 『家霊』 青空文庫
そして出来る事なら、この機会に男をも、女をも、駝鳥の卵をもみんな土蔵の恰好に鋳直したいと思つたらしかつた。
— 大正七(一九一八)年 『茶話』 青空文庫
誰かに来歴をきかれると、「これでござるか、天草一揆の折、分捕った十字架を鋳直した物でござる」と彼は得意らしい微笑を洩した。
— 菊池寛 『恩を返す話』 青空文庫
」「どうも俺にゃ解らねえ」「甲も冑も黄金細工よ、小判に鋳直せばまず一万だ」「……が、どうして盗む気だな?
— 国枝史郎 『八ヶ嶽の魔神』 青空文庫
今度は商業学校の教育方針が変えられて、従来の個人的な儲け専一の心での商業感を新しく鋳直そうとする意図が示されている。
— 宮本百合子 『今日の耳目』 青空文庫
最近の人間学的な倫理学の方向が、この社会幸福主義を性質的に高め、浄化させんがために、一方では人格主義の、いわゆる人格の意味を、個人主義的な桎梏から解放して、これは社会的人間に鋳直すことにより、人格主義と社会幸福主義とを、本質的に止揚して調和せしめんとする傾向を帯び来たったことに注意すべきである。
— ――教養と倫理学―― 『学生と教養』 青空文庫
私は私自身を複雑化し、一すじ縄で行かぬ人間に鋳直することで外界と順応することをせずに、外界を純一無雑につくり直すことで、私と一致せしめようと試みているものだ。
— 倉田百三 『光り合ういのち』 青空文庫