流れ来る
ながれくる
動詞
標準
文例 · 用例
その同じ江海でも、もし日が既に西の海に没した後、西空の夕焼けが次第に色を失い、辺りがほの暗くなり、将に夜になろうとする時になると、刻一刻と加わりまさる薄暗い雲の幕の幾重に、大空の光は包み蔽われて、陰鬱の気は一波一波と流れ来る。
— 幸田露伴 『努力論(現代訳)』 青空文庫
「さあさあ太夫さん一踊り、ご苦労ながら一踊り……※男達ならこの釜無の流れ来る水止めて見ろ……ヨイサッサ、ヨイサッサ」 大道芸人が唄い出し、鼬が立っておどりだした。
— 国枝史郎 『大捕物仙人壺』 青空文庫
地面は六甲山から流れ来る真白の砂地である。
— 小出楢重 『めでたき風景』 青空文庫
随分心細いものさ」と夢中になって話しける処へ何やら紅き水の上より流れ来るものあり。
— 春の巻 『食道楽』 青空文庫
何処からともなく流れ来る微風に、常緑樹の病葉や落葉樹の紅葉は、何等の努力もなく如何にも自然に、梢から地上へと舞い落ちる。
— 豊島与志雄 『秋の気魄』 青空文庫
それにも拘らず、ものを尋ねた向う岸の人は、まだお銀様から指示された通りに、また関山月の吹き示す通りにもその足を進めようとしないで、空しく黒血川の向う岸に立ち尽して、そうして、無心にこの流れ来る笛にのみ耳を傾けようとしているものの如くであります。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
鎖されたる扉の前に立ちて、私の胸は内殿から流れ来るいさゝかなる楽の余韻につれてうごめく。
— 吉田絃二郎 『沈黙の扉』 青空文庫
入りつ出でつ揺く男女の影は放蕩の花園に戯れ舞ふ蝶に似て、折々流れ来る其等の人の笑ふ声語る声は、云難き甘味を含む誘惑の音楽に候はずや。
— 永井荷風 『夜あるき』 青空文庫