籠中
ろうちゅう
名詞
標準
文例 · 用例
驚き見る間に羽ばたき高く、琵琶は籠中を逸し去れり。
— 泉鏡花 『琵琶伝』 青空文庫
かかるうち知識は交換されて互いの薬籠中に収められていた。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫
男の心が須臾も自分より反れないために、その男は魅気に疲れヘト/\となり、かの女の愛の薬籠中のものとなる。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
調子に乗っているのは、自家薬籠中の人物を処女作以来の書き馴れたスタイルで書いているからであろう。
— 織田作之助 『世相』 青空文庫
さては仔細のあることぞと籠中の人に齎らせたり。
— 泉鏡太郎 『十萬石』 青空文庫
慰にとのたまふにぞ、苦しき御伽を勤むると思ひつも、石を噛み、砂を嘗むる心地して、珍菜佳肴も味無く、やう/\に伴食すれば、幼君太く興じ給ひ、「何なりとも氣に協ひたるを、飽まで食すべし」と強附け/\、御菓子、濃茶、薄茶、などを籠中所狹きまで給はりつ。
— 泉鏡太郎 『十萬石』 青空文庫
籠中の人聲を震はし、「お人の惡い、斯る難儀を興がりてなぶり給ふは何事ぞ。
— 泉鏡太郎 『十萬石』 青空文庫
それより一同種々申して渠を御前にわびたりければ、幼君ふたゝび御出座ありて、籠中の人に向はせられ、「其方さほどまでに苦しきか」とあれば、「いかにも堪難く候、飼鳥をお勸め申せしは私一世の過失、御宥免ありたし」と只管にわび奉りぬ。
— 泉鏡太郎 『十萬石』 青空文庫