母犬
ははいぬ
名詞
標準
文例 · 用例
ある夜、蛭氏は少量の酒で、したたか酔つた、顔をつめたい風にさらし、珍らしく悠長な気持で自宅へ帰りつつあつた、そのとき蛭氏は自分が歩いて行く数歩先に、一匹の母犬らしい腹の皮のたるんだ、骨組みの大きな犬が、どこかへ向つて忙がしさうに行くのを発見した。
— 小説 『小熊秀雄全集−15−』 青空文庫
時にこの猴生まれて十五日、その母犬に殺され終日泣きやまず、因ってこの婢に乳養せしむると、長じて能く人の指使に随い兼ねて番語を解するというた。
— 猴に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
俺の母犬は俺を生むと間もなく暗黒の晩に道路で寝惚けた巡行巡査に足を踏まれたので、喫驚してワンと吠えたら狂犬だと云つて殺されて了つたさうだ。
— 内田魯庵 『犬物語』 青空文庫
乳も碌に飲まない中に母犬には別れ、宿なしの親なしで随分苦労もしたが、今の旦那には勿躰ないほどお世話になつて、恰と応挙の描いた狗児のやうだと仰しやつて大変可愛がられたもんだ。
— 内田魯庵 『犬物語』 青空文庫
母犬には前から離れて居たのだろう。
— 宮本百合子 『犬のはじまり』 青空文庫
一寸耳をびちっと動かした母犬は、またスヤ/\と夢をつゞける。
— 徳冨健次郎 『みみずのたはこと』 青空文庫
」 小犬は、腹がすいたか、母犬のお乳が恋しくなったか、クンクン泣いていました。
— 小川未明 『野菊の花』 青空文庫
すると、どうでしょう、そこには二|匹の小犬がいて、いま母犬のもってきてくれた、魚の骨を争いながら、小さな尾をぴちぴちとふって喜んでたべているのでした。
— 小川未明 『母犬』 青空文庫