御神灯
ごしんとう
名詞
標準
文例 · 用例
調和せざる事象に、時代錯誤に、溝渠の上なる帆を張りたる軍艦に、洋館の側に起る納曾利の古曲に、煉瓦の壁の隣りなる格子戸の御神灯に、孔子の尊像の前に額づくフロツクコオトの博士等に――是等の不可思議なる光景に吾等の脳髄が感ずる驚駭を以て自分等の趣味を満足して置かねばならぬ。
— 木下杢太郎 『市街を散歩する人の心持』 青空文庫
ちょうどそら高田の旦那の真向でしたろう、東家の御神灯のぶら下がっていたのは」十七 私はその東家をよく覚えていた。
— 夏目漱石 『硝子戸の中』 青空文庫
――アリストートルはどうでも構わないが、この辺の寺はどれも、一種妙な感じがするのは奇体だ」「舟板塀趣味や御神灯趣味とは違うさ。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
浜田屋には強いおっかさんがいるのだという事もきいたが、わたしが気をつけて見るようになってからは、これもよい縹緻だった小奴という人の御神灯がさがっていて奴の名はなかった。
— 長谷川時雨 『マダム貞奴』 青空文庫
三日月お蝶という、額に傷のある女が、学校用品店の隣の御神灯を下げた家から出て来たり、運動場の隅に立ってると、おさらいの三味線の音が聞こえてくるなどは、今日ならば必ず教育上の問題として、区会の議題位にはなったであろう。
— 宮島資夫 『四谷、赤坂』 青空文庫
清元千賀春という御神灯のさがった小粋な大坂格子。
— 三人目 『顎十郎捕物帳』 青空文庫
ただ雨上りの瓦屋根だの火のともらない御神灯だの、花のしぼんだ朝顔の鉢だの……これは亦今度の大地震は一望の焦土に変らせてしまった。
— 久保田万太郎 『雷門以北』 青空文庫
よく磨いた格子のなかには、御神灯がブラ下って、居間の長火鉢の上には、三味線が二挺――それを見ると、余吾之介は二の足をふみましたが、此処まで来るとお秋の方が帰してはくれません。
— 野村胡堂 『十字架観音』 青空文庫