茹蛸
ゆでだこ
名詞
標準
文例 · 用例
雨のため、部屋の窓が全部しめ切られて在るので、蒸し暑く、私は酒が全身に廻って、ふうふう言い、私の顔は、茹蛸のように見えたであろう。
— 太宰治 『善蔵を思う』 青空文庫
やがて主人はまくり手をしながら茹蛸のようになって帰って来た。
— 幸田露伴 『太郎坊』 青空文庫
私は、彼こそは一滴の酒も口にせぬ謹厳な郷士と認めてゐたのに、思ひきや、大あぐらの茶碗酒で湯アガリどころか茹蛸もどきの大入道で最早呂律も廻らぬ態たらくであつた。
— 牧野信一 『月あかり』 青空文庫
すると老看守は引ッつるように顔を顰めながら、「……先ほど申しましたように、わたしはこの室へ入った瞬間に、その割れた玻璃窓の外のデッキから、それは恐ろしいやつが、海のほうへ飛び込んだのです……それは、なんでも、ひどく大きな茹蛸みたいに、ねッとりと水にぬれた、グニャグニャの赤いやつでした……」「蛸?
— 大阪圭吉 『灯台鬼』 青空文庫
(あ、困った)そのとき、厠の扉が、はげしく鳴りひびき、中から旦那様が、茹蛸のような頭をふりたてて出てきた。
— 海野十三 『什器破壊業事件』 青空文庫
とかくして、浴後の褌一つに、冬をも暑がってホッホッという太息、見れば全身|宛ら茹蛸のようだ。
— 柴田流星 『残されたる江戸』 青空文庫
橄欖寺の先々代は学識秀でた老僧であつたが、酒と茹蛸が好物で、本堂に賭博を開いては文字通り寺銭を稼いで一酔の資とするのが趣味であつた。
— 坂口安吾 『黒谷村』 青空文庫
町へ出る度に、茹蛸を仕入れて帰るのが楽しみであつたが、一日、まるまるとした入道を仕入れたので満悦して山門をくぐつた。
— 坂口安吾 『黒谷村』 青空文庫