稀々
稀々
名詞
標準
文例 · 用例
昨日迄大変暑かつたのにも今日はボンヤリした日が射してゐて、時々夕立でも降らせさうな雲の塊が乾き切つた庭の土を薄暗くしたり、そして稀々しくも地面を匍ふやうな微風が所々に生えた雑草などを揺るので、私の心は思ひ出を巡るに似合はしい気分になつて、その蛇の思ひ出はだんだん拡がつていつた。
— 中原中也 『その頃の生活』 青空文庫
然るに今は此歌稀々になりて、更にまた奇異なる謠は、屋敷田畝に光る物ア何ぢや、 蟲か、螢か、螢の蟲か、 蟲でないのぢや、目の玉ぢや。
— 泉鏡太郎 『蛇くひ』 青空文庫
初めから稀々にしか見なかった父宮であったから、今は第二の父と思っている源氏にばかり馴染んでいった。
— 若紫 『源氏物語』 青空文庫
博士は私に対しては、努めていろいろの話をされるにも関らず、夫人に対しては、必要な言葉以外には殆ど話しかけられず、稀々話しかけられる言葉も、いつでもせいぜい四五文字にしかならない短いものだった。
— 甲賀三郎 『血液型殺人事件』 青空文庫
骨を捜して歩く老人のすがたが稀々に見えるだけだった。
— 永井隆 『この子を残して』 青空文庫
歌にしよう、よい歌を作り上げようといふ意圖のなかつた僧家の歌に、ほんの稀々ながら、とびぬけてすきになれる物がある。
— 折口信夫 『好惡の論』 青空文庫
時を定めて来る神は、稀々にしか見えぬにしても、さうした巫女が定められて居た。
— 折口信夫 『国文学の発生(第二稿)』 青空文庫
文献の証明と、稀々に使はれることゝ、さうして頻繁に使用することゝ、此三つの方言の現れ方があつて、後の二つは注意せられて居ない。
— 折口信夫 『「さうや さかいに」』 青空文庫