罔
罔
名詞
標準
文例 · 用例
小さな御幣の、廻りながら、遠くへ離れて、小さな浮木ほどになっていたのが、ツウと浮いて、板ぐるみ、グイと傾いて、水の面にぴたりとついたと思うと、罔竜の頭、絵ける鬼火のごとき一条の脈が、竜の口からむくりと湧いて、水を一文字に、射て疾く、船に近づくと斉しく、波はざッと鳴った。
— 泉鏡花 『伯爵の釵』 青空文庫
小さな御幣の、廻りながら、遠くへ離れて、小さな浮木ほどに成つて居たのが、ツウと浮いて、板ぐるみ、グイと傾いて、水の面にぴたりとついたと思ふと、罔竜の頭、絵ける鬼火の如き一条の脈が、竜の口からむくりと湧いて、水を一文字に、射て疾く、船に近づくと斉しく、波はざツと鳴つた。
— 泉鏡花 『伯爵の釵』 青空文庫
又の鼻は忌むべき飮食物を嗅がば、の舌を欺罔する勿れ。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
目見青きドミニカびとは陀羅尼誦し夢にも語る、禁制の宗門神を、あるはまた、血に染む聖磔、芥子粒を林檎のごとく見すといふ欺罔の器、波羅葦僧の空をも覗く伸び縮む奇なる眼鏡を。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
「芥子粒を林檎のごとく見すという欺罔の器」と「波羅葦僧の空をも覗く、伸び縮む奇なる眼鏡」とを持った奇怪な妖術師である。
— 中島敦 『鏡花氏の文章』 青空文庫
走るものは以て罔を為すべし、游ぐものは以て綸を為すべし、飛ぶものは以て黒竜を殺し以て冀州を済う〉、また〈黄帝は土徳にして黄竜|見る〉、また〈夏は木徳にして、青竜郊に生ず〉など、吉凶とも竜の動静を国務上の大事件として特筆しおり、天子の面を竜顔に比し、非凡の人を臥竜と称えたり。
— 田原藤太竜宮入りの話 『十二支考』 青空文庫
ドイツの俚説に灰上に家鴨や鵞の足形を印すれば、罔両ありと知るという(タイラー『原始人文篇』二板、二巻一九八頁)。
— 鶏に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
あまたの人を斬りて罪業を重ね、恐ろしき欺罔の魔道に迷ひ入り、殺生に増る邪道に陥り行くうち、人の怨みの恐ろしさを思ひ知りて、われと、わが身を亡ぼしをはんぬ。
— 夢野久作 『白くれない』 青空文庫