蓮弁
れんべん
名詞
標準
文例 · 用例
しかし、あの谷この谷から集り出てくれた見知らぬこれらの人人の眼に、自分の幼い姿が刻まれていたのだと、そう思うと、野山の色が指さきに迫りよる瑞瑞しさを覚え、さし覗く顔の皺を、田畑を支え保っていてくれた台座の勁い蓮弁を見るように、黙って彼は見るのだった。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
○東大寺、大仏の蓮弁の毛彫、須ミセンの図を見る。
— 一九二五年(大正十四年) 『日記』 青空文庫
蓮弁にのぼってそばで見られよかったが、どうも大勢が下からサイ銭をなげ拝して居る仏の蓮弁にはいのぼること、のぼらない人間の感情を思って心苦し。
— 一九二五年(大正十四年) 『日記』 青空文庫
おかしなことをいうようであるが、この像をながめた後で目をつぶると、鶴見にはその台座の蓮弁が危うげに動いて、今にも散ってゆくかのように見える。
— ――黙子覚書―― 『夢は呼び交す』 青空文庫
事実この蓮弁はその一つ一つが離れてでもいるらしく彫り込んである。
— ――黙子覚書―― 『夢は呼び交す』 青空文庫
目をあげてよく見れば、それは尊像の台座から離れた蓮弁である。
— ――黙子覚書―― 『夢は呼び交す』 青空文庫
かれは勿体ながって腕を伸して、その蓮弁を掌にお受けしようとした。
— ――黙子覚書―― 『夢は呼び交す』 青空文庫
あせればあせるほどその蓮弁の影が滅え失せるように薄らいで、骨を折っても手には取られない。
— ――黙子覚書―― 『夢は呼び交す』 青空文庫