血川
ちかわ
名詞
標準
文例 · 用例
その肩を昼のような月が辷って、黒血川の水にささやかな金波銀波を流しています。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
それは、この流れが黒血川の流れだということも、お銀様の口から初めて聞いて知ったくらいだから、関の藤川だの、不破の古関の跡だのというものを、不意に尋ねられて、米友に明答ができるはずがないからです。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
それにも拘らず、ものを尋ねた向う岸の人は、まだお銀様から指示された通りに、また関山月の吹き示す通りにもその足を進めようとしないで、空しく黒血川の向う岸に立ち尽して、そうして、無心にこの流れ来る笛にのみ耳を傾けようとしているものの如くであります。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
お銀様はこのことに憤りを発して、含むところある沈黙の凝立を守っていると、そのいずれにも頓着なく、黒血川に浸っていたところの髑髏が、不意に米友の手から離れて、月の天上に向いて舞い上りました。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
七十 関ヶ原の環境の波動がこういう次第のものである中に、ひとり取残されたものに黒血川の髑髏がある。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
北国街道の彼方に於ては道庵大御所の旗本が電光石火を降らしている間、不破の古関に於ては風変りの関守と、昨夜「関山月」を聞き分けて来た怪しい覆面のない男とが、白昼、炉を擁して端坐している時――かの髑髏はひとり黒血川の流れに漂うて、あなめあなめと泣いているが、それをとむらい来るものはありません。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
黒血川の名はその時から起り、今こそ水は澄んでいるが、髑髏を見ると、流れ去ることを沮んで恨みをとどめようとするのは、千百年にしてなお浮べないものがあるからだ。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
ちょうどこの日、北国街道の小関、天満山の麓では、道庵先生の旗風が三たび靡き、三たび立直っている激戦の最中――その矢叫びも、棒ちぎれも、ここまでは届かない閑寂なる黒血川の岸。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫