耳朶
みみたぶ
名詞
標準
文例 · 用例
耳朶の下の方から首条にかけての皺が、慥かにもう四十代も中半を越えた私の父であることを物語つてゐた。
— 中原中也 『その頃の生活』 青空文庫
秒刻は銀波を砂漠に流し老男の耳朶は螢光をともす。
— 中原中也 『山羊の歌』 青空文庫
私は炬燵にあたつてゐました彼女は畳に坐つてゐました冬の日の、珍しくよい天気の午前私の室には、陽がいつぱいでした彼女が頸かしげると彼女の耳朶 陽に透きました。
— 中原中也 『山羊の歌』 青空文庫
朝の黄金の光が颯っと射し込み、庭園の桃花は、繚乱たり、鶯の百囀が耳朶をくすぐり、かなたには漢水の小波が朝日を受けて躍っている。
— ――新曲聊斎志異―― 『竹青』 青空文庫
單調な東京音頭は嵐か波の音と思つて聽き流すことが出來ると假定しても、可愛い子供の片言は身につまされてどうにも耳朶の外側に走らせることの出來ぬものである。
— 寺田寅彦 『伊香保』 青空文庫
あゝ、うつくしい白い指、結立ての品のいゝ圓髷の、情らしい柔順な髱の耳朶かけて、雪なす項が優しく清らかに俯向いたのです。
— 泉鏡花 『雪靈記事』 青空文庫
」 と耳朶まで真赤にした。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
) 名工のひき刀が線を青く刻んだ、小さな雪の菩薩が一体、くるくると二度、三度、六地蔵のように廻る……濃い睫毛がチチと瞬いて、耳朶と、咽喉に、薄紅梅の血が潮した。
— 泉鏡花 『木の子説法』 青空文庫