愁思
しゅうし
名詞
標準
文例 · 用例
風景の中に縹渺する、彼のノスタルジアの愁思であろう。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
友の眉には無限の愁思あり、友の胸には無限の琴線あり。
— 田山花袋 『秋の岐蘇路』 青空文庫
肉体の欲に※きて、とこしへに精神の愛に飢ゑたる放縦生活の悲愁ここに湛へられ、或は空想の泡沫に帰するを哀みて、真理の捉へ難きに憧がるる哲人の愁思もほのめかさる。
— 上田敏 『海潮音』 青空文庫
肉體の欲に※きて、とこしへに精神の愛に飢ゑたる放縱生活の悲愁こゝに湛へられ、或は空想の泡沫に歸するを哀みて、眞理の捉へ難きに憧がるゝ哲人の愁思もほのめかさる。
— 上田敏 『海潮音』 青空文庫
水浅く濁って、ただ水田の広いのに過ぎないこの西湖が、如何に三潭印月や湖心亭の影を宿そうとも、また、煙雨の中に模糊たる愁思を漂わそうとも、また、数々の名跡を周辺に鏤めようとも、畢竟は、湖底は寺院の香の灰に蔽われてるという巷説を、否定できるものではない。
— ――近代伝説―― 『画舫』 青空文庫
夜半八丁堀の溝渠に沿うて築地の僑居に歸らうとした道すがら、わたしは家毎に簾を編む機杼の音の薄暗い裏町にひゞくのを聞き、春は去つて將に夏ならんとする市井の情調の猶掬すべきものあるを思ひ、却て愁思を動した事があつた。
— 一名京都紀行 『十年振』 青空文庫
偏奇館独り窓に倚るも愁思少し。
— 永井荷風 『偏奇館漫録』 青空文庫